『もっと地図を使おう』を書いていたときに、わたしの脳裏をかすめていた友人がいました。ああ……、でも、地図を読めない人もいるよね……。
友人は、頭脳明晰な人ですが、地図が読めません。
他のことの有能さにくらべて、その読めなさ加減が徹底しているので、いつか
「うそなんじゃないの」って聞いたら、
「そんなばかな嘘ついてどうすんの!」と、怒られました。
全く、おっしゃる通りです。ごめんなさい。
彼女は、地図が読めないので、道案内のときは、全部言葉で事細かく書いてくれます。これがとてもわかりやすいのです。
かたや、私は地図を見るのが好きです。ずっと地図を見ていられます。新幹線に乗るときも、iPadで地図をずっと見ていたいのですが、電池がなくなるので、たまに覗くくらいにして我慢しています。
アイルランドをクルマで旅行したときも、10日間以上、ずっと助手席で、紙の地図でナビをしていました。それが楽しいのです。そして、家のクルマにはカーナビがついていません。ナビなんかついてると面白くないからです。M?
で、その友人は、現在、たまたまLife of Piを読んでいるのですが、とても興味深く、また重要なことをフェイス・ブックで書いていました。ご本人の了承を得て、転載します。
「なんとなく英書を読むコツがつかめてきたよな気がする。日本語を読むときに無意識にやっていることを意識的にやればいいのではないか?小説でもなんでも、だいたいにおいて、結論に向かって、前置き⇒説明⇒寄り道(他の例などを出す。演繹みたいな感じ?)⇒結論という塊が、チャプターに3、4回出てくる。前置き、説明、寄り道の時点で、結論は80パーセント以上推測できる。おそらく日本語では無意識に推測しているはず。結論にいたるまでは、そこいら中ヒントだらけ。単語がいくつかわからなくても、作者が敷いてくれた筋道に沿っていけば、その塊で言わんとすることは、100パーセントわかる。そんなわけで、Life of Pie、面白くて中々途中でやめられません。」
なんと左脳的で論理的な読み方でしょうか。わたしは、こんなことしません。思いつかない。
シュタイナー本や、英語の詩を読む時に、構造を捉えて読むことを教わって、
「ああ、なるほど」と、思いましたが、物語を読むときには、普通、しません。
「英語のセンセしてる友人が「頭の中で地図を描けるかどうかが大事」と教えてくれましたが、私は日本語でもそれができません。二次元から三次元を想起できないのです。Life of Pieでも、ライフボートの構造や、物やパイとトラの位置など、読んでいてもさっぱり分かりません。しかしこれは日本語で読んでも多分同じだろうと思い、気にしないことにしました。日本語の小説でも、風景描写はすべて読み飛ばしています。」
「二次元から三次元を想起できない。」ご自分のことも、高い分析力で判断して、どう読むか決めています。
そして、この方、大変な読書家です。翻訳も含めた言葉関係の仕事のプロです。
私とは全く違う読み方が提示されて、とても助かりました。脳内映像化タイプの一つの読み方だけしかここで提示されなければ、「うまくイメージできないから、英語の本は読めない」と、思ってしまう方もいらっしゃるでしょう。そんなことはありません。
脳内で地図を描かなくても、二次元を三次元変換して映像化しなくても、物語の構造からプロット(筋立て)を捉えていく、という読み方もあります。
ここまでご紹介してきた読み方は、あくまで私の個人的な体験に基づく読み方なので、「脳内映像化できない=読めていない」ではありません。
昨日の記事の会社の先輩のように脳内映像化しない人もいますし、上記のような、構造からプロットを追っていく道もあるわけです。
読み方は人それぞれです。
ぜひ、ご自分の読み方を見つけてください。
注意深く読まれている方には、お気づきいただけているかと思いますが、前出の記事でも脳内映像化に関しては、「物語の場合は」「判断基準の一つになる」という書き方をするようにしてきました。評論、思想書などは、構造から読んで行かないと内容を捉えられないことを想定していたからです。でも、言葉足らずだったかもしれません。すみません。
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